Q & A
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2025.8 中小法人等の法人税の軽減税率の特例の延長等
令和7年度税制改正で中小企業に対する法人税の軽減税率が延長されると聞いたがどのような内容か?
中小企業者等の法人税率の特例とは中小企業の税負担を軽減し、事業活動を支援するために設けられた措置です。この特例は一定の要件(基本的に資本金1億円以下等)を満たす中小企業者等に対して、通常の法人税率よりも低い税率を適用するものです。
中小企業者等に対する法人税の軽減税率は段階的に設定されており、以下のような内容になっています。
・所得年800万円以下の部分
通常の法人税率(23.2%)に対して、軽減された税率として15%が適用されます。
・所得年800万円超の部分
通常の法人税率(23.2%)が適用されます。
上記の規定について、次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長され2027(令和9)年3月31日までに開始する事業年度まで適用されることになりました。
1 所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率が17%とされました。
2 適用対象法人の範囲から通算法人が除外され、中小通算法人等の軽減対象所得金額(年800万円を通算グループ内の法人の所得の金額の比で配分した金額)以下の金額に適用される税率が19%とされました。
中小企業に対して実施されている軽減税率の特例は、年間所得800万円までの部分に適用されるもので、この措置はリーマン・ショックの際に日本経済が大きな打撃を受けたことを受け、経済対策の一環として導入された一時的な措置です。当初は期限が限られていた時限的な政策でしたが、その後も複数回にわたって延長されてきました。この制度は、財政的な余裕が限られている中小企業に配慮し、その税負担を軽減することを目的としたものです。その結果、中小企業にとって重要な経済支援策として機能し、経済の安定化に一定の役割を果たしてきました。
今回、この軽減税率の適用について、その期限をさらに2年間延長することが決まりました。この決定に至った背景には、中小企業が直面する現在の厳しい経済環境があります。賃上げ要求への対応や急速な物価高騰、エネルギー価格の上昇など、企業経営を取り巻く課題は多岐にわたります。この延長措置により、中小企業は当面の間、軽減税率の恩恵を受け続けることが可能となり、経済活動の維持や雇用の安定に寄与することが期待されています。
しかしながら、今回の延長にあたっては一部見直しが行われることも明らかになっています。具体的には、中小企業のなかでも極めて所得が高い企業について、軽減税率の適用に一定の制限を設けることが検討されています。これは、すべての中小企業が一律で同じ恩恵を享受するのではなく、企業の規模や収益状況に応じて特例措置の対象を見直すことで、公平性や財政面でのバランスを図る狙いがあると思われます。