Q & A
パートナーズプロジェクトでは、法律・税務・社会保険に関して、日常よく出くわす身近な問題を中心にQ&A形式でわかりやすく解説しています。
ぜひ日頃の経営問題の解決にお役立て下さい。
2023.04 SNS と著作権侵害
SNS で見つけた写真を加工し SNS に投稿したところ、ネタに使われるなどして、多くの人から反響がありました。
ところが数か月たった頃、SNS のダイレクトメールに、加工に使用した元の写真について、写真素材を扱う版権管理会社というところから、「無断転載」の著作権侵害として損害賠償の請求書が届き、支払いがなければ法的措置を執ると書かれていました。
高額な請求に驚いて元の写真について調べたところ、10数年前に、あるカメラマンが撮影し雑誌に掲載された写真で、今は版権管理会社がその写真の著作権を管理しており、写真素材として利用するには利用料を支払うことと利用規約に書かれていました。
① 加工した写真による収入は無かったのですが、損害賠償金を支払わなければなりませんか?
② 連絡が来たのが SNS のダイレクトメールだったので、自分の住所等が版権管理会社に知られては無いと思うのですが、このまま無視してはダメですか?法的措置とはなんですか?
私的使用の範囲内など許可なく使える場合を除き、著作者や著作権者の許可を得ずに著作物を利用した場合、「著作権侵害」となります。また犯罪行為となるため、罰則規定も設けられています。
今回の場合、 「著作者に無断で著作物である写真を加工し、SNS に投稿して無断転載したこと」が著作権の侵害に当たります。
① 金銭的な利益が得られていない場合でも、権利を侵害したことには変わりませんので、著作権者から損害賠償を請求された場合には、賠償に応じなければなりません。また、「他者の著作物を自身の SNS に転載して公表すること」は私的使用の範囲を逸脱するため、利用規約に定められた利用料を併せて請求されることも考えられます。
② 著作権者が SNS の管理者に対し情報開示請求をすることで、投稿者の登録内容やインターネットの接続会社等が開示され、さらにそこから投稿者を特定する事が出来ますので、無視したり放置したりすることは危険です。
また、法的措置としては、民事では、損害賠償請求として裁判所に著作権者から調停や訴訟を申し立てられること、刑事では、著作権侵害として警察等に著作権者が「告訴」することで刑事罰に問われることが考えられます。
著作権は、著作者が著作物を創作した時点で自動的に付与される権利で、「著作者人格権」と「著作権(財産権)」の2種類があります。いずれも、私的使用や引用、学校の授業での利用等、一部の場合を除き、他人が著作者や著作権者に無断で著作物を利用した場合、「著作権侵害」となります。
・ 著作者(カメラマン)に無断で著作物の加工や内容を変更 → 著作者人格権の「同一性保持権」の侵害
・ 著作権者(版権管理会社)に無断で SNS に転載して公表 → 著作権(財産権)の「複製権」の侵害
上記のような著作権の侵害があった場合、著作権者は、権利を侵害した者(SNS の投稿者)に対し、「侵害行為の差止請求」、「損害賠償の請求」をすることが出来ますし、投稿者が無断転載により利益を得ていた場合には「不当利得返還請求」を、名誉を傷つけられた場合には「名誉回復等の措置(謝罪文の掲載など)」を求める事が出来ます。なお、当事者同士の話し合い(示談)での解決が難しいとなった場合、裁判所での調停や訴訟となることもあります。
また、著作権侵害は犯罪行為であり、悪質だとして著作権者に「告訴」された場合、警察に逮捕され、
・ 著作者人格権の侵害 → 5年以下の懲役 または 500万円以下の罰金 (併科も可)
・ 著作権(財産権)の侵害 → 10年以下の懲役 又は 1000万円以下の罰金 (併科も可)
として罪に問われる可能性もあります。
SNS への投稿が匿名であっても、著作権者の請求によって、SNS の管理者や通信会社等が情報を開示することもあり、権利を侵害した者が誰かを特定することも可能となっています。なお、著作権者と SNS の管理者や通信会社との間で情報開示のための裁判となった場合、その裁判の費用や訴訟提起までの遅延損害金も損害額に加算され、請求される場合もあります。
Twitter や YouTube など、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及により、作成したイラストや音楽、写真、映像など、多くの人に伝える機会が増えました。自分で創作した物はもちろんのこと、他者が創作した物も著作物であり、それぞれに著作者としての権利があるものです。
ネットで見つけた著作者不明の「拾い画」だからといって、許可なく SNS に掲載したら「無断転載」となり、後々トラブルに発展する可能性もあるので、気を付けましょう。