Q & A
パートナーズプロジェクトでは、法律・税務・社会保険に関して、日常よく出くわす身近な問題を中心にQ&A形式でわかりやすく解説しています。
ぜひ日頃の経営問題の解決にお役立て下さい。
2020.10 敷金の返却
このたび賃貸マンションを退去することになりましたが、大家さんは原状回復費用と敷金返還請求権とを相殺するので、敷金は返済しない とのことでした。マンションを退去する際に私が負担しなければいけない費用とはどういうものでしょうか。
通常損耗や経年劣化を超える、部屋の「原状回復」に係る費用はご自身の負担となります。
旧民法には敷金精算と原状回復について、明文の規定はなく、裁判所の判例などに基づき判断されていましたが、2020年4月1日に改正民法が施行され、それらが民法の規定として明文化されました。それにより賃借人が負わなければならない義務の範囲が法的に明確になりました。
改正民法第622条の2において、契約終了などによる建物の明渡しをうけたときには、賃貸人は、敷金の返還義務を負いますが、それを債権(修繕費等)の回収に充てることができることを明らかにしました。
原状回復に関して621条は、入居後に生じた損傷は賃借人に原状回復義務があるが、例外として入居後に生じた損傷であっても「通常の使い方をしていても生じる変化」と「年月の経過によって生じる変化」や「賃借人の責任によって生じたわけではない損傷」については、賃借人に原状回復の義務はない、としています。賃借人に原状回復の義務があるかどうかを判断する基準は、以下の通りです。
原状回復義務を負う ・引っ越し作業で生じたキズ ・タバコのヤニ・臭い
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備などの毀損
原状回復義務を負わない ・家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡
・地震で破損したガラス ・鍵の取替(破損、鍵紛失等のない場合)
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
以上について国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」として指示しています。民法改正による原状回復の費用負担の定義が詳しく記載してありますのでご参考下さい。
なお、契約で特別の定めをしていないときは民法の上記の改定に従いますが、契約で異なる定めをすることも可能です。契約書などで上記と違う取り決めをした際は、民法以外の法律に抵触する場合を除き、原則契約書で定めた条件が優先されます。
※原則、2020年4月1日の施行後に締結された契約は改正後の新しい民法が適用され、施行日前に締結された契約については改正前の民法が適用されます。
詳しくは弁護士等にご相談ください。