Q & A
パートナーズプロジェクトでは、法律・税務・社会保険に関して、日常よく出くわす身近な問題を中心にQ&A形式でわかりやすく解説しています。
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2018.02 市街化調整区域の農地の仮登記の権利と時効
当社は、市街化調整区域内の農地を転用目的で購入し、所有権移転仮登記も済ませています。工場を建てようと思いますがいっこうに市街化区域に編入されません。
当社の権利を保全する目的で仮登記を済ませていますが時効はあるのでしょうか。
時効により消滅します。
農地について売買が成立していても、都道府県知事の許可がなければ農地の所有権移転の効力は生じません。
売買契約の成立により、買主は売主に対して所有権移転の効果を発生させるために「許可申請協力請求権」を有します。また、売主も買主に協力して許可申請をすべき義務を負います。
許可申請協力請求権は、許可により移転する農地所有権に基づく物権的請求権ではなく、また所有権に基づく登記請求権に随伴する権利でもなく、売買契約に基づく債権的請求権であり、民法167条1項の債権に当たると解され、売買契約成立の日から10年の経過により時効となり消滅してしまいます。
消滅時効は権利を行使することができる時から開始することになっており、権利を行使するにあたり法律上の障害がなくなった状態を言うとされていますので、市街化調整区域内の農地について、農地法5条の許可申請をしても許可を得ることができないのは事実上の問題であって、法律上の障害にはなりません。
時効にかからないようにするために、例えば、売買契約書で「農地法第5条の許可申請は市街化調整区域の指定が解除された後、速やかに行う」と記載し、市街化調整区域の指定が解除されない限り、時効が進行しないようにするなどの方法も考えられます。