Q & A
パートナーズプロジェクトでは、法律・税務・社会保険に関して、日常よく出くわす身近な問題を中心にQ&A形式でわかりやすく解説しています。
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2017.09 被相続人名義の銀行預金の引出し
父親が亡くなり、葬儀費用を金融機関に下ろしに行ったところ、父親名義の預貯金を引き出すことが出来ませんでした。
故人名義の預貯金は、「相続財産」です。遺産分割の対象となります。故人名義の口座は、そのまま使用することが出来なくなります。
相続人間の衡平を図るために、口座を凍結させたのです。故人についての遺産分割協議が終了し、初めて払い戻しが出来るようになります。
平成28年12月19日までは、金融機関の預金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割され、相続人に承継されました。「預貯金は、遺産分割の対象にならない」と考えられてきました。
しかし、上記日時の最高裁(「本件最高裁判例」と言う)が、従来の考え方を改めました。「普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割の対象となる」との決定を行いました。
本件最高裁判例は、既に、確定している遺産分割審判、遺産分割協議書・調停に影響しない。とされていますが、預貯金が残存している場合は、別途、これについて遺産分割をすることになります。
相続人全員が合意して、金融機関に払戻請求をすれば、金融機関は、これに応じることになります。しかし、本件最高裁判例後、相続人全員が合意しない場合、各自がそれぞれ金融機関に対して、自己の相続分につき、払い戻し請求をしても金融機関は、これには応じなくなったのです。相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることなく、遺産分割の対象となるものと決定されたからです。
今後は、遺産分割協議が終了するまで、相続人の各法定相続分を、各相続人は、出金することが出来ません。他方、相続税の申告と納税は、被相続人が死亡後、10ヶ月以内にする必要があり、この取り扱いは変更されていません。それ故、納税時期までに、遺産分割協議が終了しないと払い出しが出来ず、遺産から相続税を支払うことは出来ず、納税に困難を来たす可能性もあるでしょう。相続人自身の財産を削って納付することもありうるでしょう。
本件最高裁判例の決定を受けて、十分な注意が必要です