Q & A
パートナーズプロジェクトでは、法律・税務・社会保険に関して、日常よく出くわす身近な問題を中心にQ&A形式でわかりやすく解説しています。
ぜひ日頃の経営問題の解決にお役立て下さい。
2017.02 失火の責任と賠償は?
私は繊維関係の工場を営む個人事業主です。
この度、私の所有する工場から火災が発生し、工場が全焼し、隣接する個人宅の車庫も全焼してしまいました。
その後の警察の調べで出火の原因はネズミが電気配線をかじってしまい配線がショートしたという事が判明しました。
失火の責任と賠償は発生しますか?
失火元になった場合、原則として責任は発生します。
但し、例外として過失が無い場合は責任と賠償を免除されます。
重過失がある場合のみ責任と賠償が発生します。
失火元となったあなたは他人の財物に損害を与えているため当然、責任があります。(不法行為責任、民法第709条)
但し、日本では例外として責任を免除される法律、失火ノ責任ニ関スル法律[明三二法四〇]があり、(民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限リニ在ラス)とされています。
これは日本が古来より木造建築物が多く、一度火事になってしまうと被害が拡大し、損害額も相当になり、個人の負担能力を大幅に超えてしまいます。そのため例外的に賠償を免除する
法律が制定されました。
しかし、これに対し、重大な過失がある場合においては失火の責任や賠償が発生します。
過去の裁判例ではガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけ、中火程度にして台所を離れたため天ぷら油に引火し、火災が発生した例、石油ストーブに給油する際、石油ストーブの火を消さずに給油したため、こぼれた灯油に石油ストーブの火がつき火災が発生した例などが重大な過失と認められました。
つまり、わずかな注意を怠り、危険がたやすく予見できた場合には重大な過失があると言えます。
今回の場合は、注意義務を怠ったとは認められませんので、失火の責任や賠償は無いと考えられます。
重大な過失があった場合、責任は重くなります。
個人賠償責任保険でカバー出来るケースもありますので、加入を検討してみるのもよろしいでしょう。